細胞周期調節因子阻害剤の探索
私たちは、細胞周期の進行を調節するタンパク質についての研究を行っています。その様なタンパク質の中で、私たちは特にWee1というタンパク質に注目して研究を進めてきました。Wee1は細胞分裂期に入る準備ができるまでCDKをリン酸化してその活性を抑制しますが、分裂期に入ると逆にリン酸化されて活性を失い、またWee1のリン酸化はWee1の分解を引き起こします。このリン酸化に誘導される分解機構の詳細も私たちは明らかにしました。
エイズウイルスのタンパク質のひとつであるVprというタンパク質にも細胞の分裂開始を抑制する機能があります。Vprタンパク質はエイズウイルスの病原性とも関連が深いと考えられており、私たちはVprの作用機構の解析を行っています。
これらの研究で得られた知識を私たちは細胞周期進行を阻害する化合物の単離に応用しています。この様なタンパク質はがん細胞の増殖阻害に応用できると考えています。最近では、タンパク質のリン酸化を介したタンパク質間相互作用に注目し、その阻害剤の探索系を構築しました。例えば、PLK1という細胞周期調節因子のポロボックス領域(PBD)に依存したタンパク質間相互作用はタンパク質リン酸化に依存しますが、その特異的阻害剤を見い出しPBD依存結合の役割を解析しました。また、出芽酵母を用いてVpr阻害剤探索系も構築し、Vprを阻害する化合物を見い出しています。