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かび毒の生産制御機構 -テヌアゾン酸の生産制御因子を同定-

当研究グループの尹忠銖研究員、本山高幸専任研究員、長田裕之グループディレクターの研究チームは、かび毒の一つテヌアゾン酸の生産制御因子の遺伝子を2個同定し、テヌアゾン酸の生産制御メカニズムを明らかにしました。

テヌアゾン酸はイネいもち病菌[6]など多くの植物病原糸状菌が生産することが分かっています。テヌアゾン酸はタンパク質の合成を阻害し、植物に対する毒として作用します。テヌアゾン酸などのかび毒を制御するには、その生産メカニズムを明らかにすることが重要です。研究チームは、テヌアゾン酸を特定の条件でのみ生産するイネいもち病菌を用いて、生産メカニズム解明のための研究を行ってきました。これまでに、二種類のテヌアゾン酸生産誘導条件を見いだし、生合成遺伝子TAS1を同定し、生合成メカニズムを明らかにすることに成功しています。(関連記事)

今回、研究チームは、これらの生産誘導条件及び生合成遺伝子を利用した解析により、テヌアゾン酸の生産制御に関与するタンパク質を見いだし、生産制御メカニズムを明らかにすることに成功しました。まず、テヌアゾン酸生産誘導条件で解析することにより、テヌアゾン酸の生合成遺伝子TAS1の近傍にあるTAS2の産物TAS2がテヌアゾン酸生産を正に制御する転写因子であることを明らかにしました。また、糸状菌の二次代謝の制御因子として知られるLaeAのホモログ(相同体)であるPoLAE1の遺伝子を操作することにより、PoLAE1もテヌアゾン酸生産を正に制御する転写因子であることを見いだしました。さらに、遺伝子操作株を用いた解析により、PoLAE1の下流でTAS2が働いていることを見いだしました。

プレスリリース
かび毒の生産制御機構
-テヌアゾン酸の生産制御因子を同定-
論文
Yun CS, Motoyama T, Osada H.: Regulatory Mechanism of Mycotoxin Tenuazonic Acid Production in Pyricularia oryzae.
ACS Chem Biol, 12(9): 2270-2274 (2017) PMID: 28820236 [ doi: 10.1021/acschembio.7b00353 ]

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