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エイズウイルスの細胞間感染の新たなメカニズムを解明

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター粘膜システム研究グループの大野博司グループディレクター、環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループの長田裕之グループディレクターと熊本大学エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)の鈴伸也教授らの共同研究グループは、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスである「HIV-1」が細胞から細胞へと感染拡大する際の新たなメカニズムを解明しました。
細胞膜の細い管である細胞膜ナノチューブ(tunneling nanotube、TNT)は、離れた2つの細胞同士を連結することで、細胞間の素早い物質交換を可能とする手段として知られています。大野グループディレクターらは2009年に、M−Secという分子がTNTの形成因子であることを発見しました。
HIV-1が感染拡大していく経路には、一度、HIV-1が感染細胞の外に出て周囲の未感染細胞に感染する経路のほかに、TNTを介してHIV-1が感染細胞から未感染細胞に移る経路が知られていますが、そのメカニズムは明らかにされていませんでした。共同研究グループは今回、HIV-1がTNTの形成を促進することでTNTを介した細胞間感染の効率を上げていること、さらにTNTの形成を抑制する化合物によりHIV-1の細胞間感染が約半分に抑えられることを発見しました。TNTの形成を抑制する化合物を応用することで、これまでの薬剤とは異なる作用メカニズムに基づく新たな抗エイズ薬の開発が期待できます。

実験にはTNT形成を抑制する低分子化合物 NPD3064 が用いられましたが、この化合物は理研天然物化合物ライブラリNPDepoの中から見出されたものです。

関連

プレスリリース
エイズウイルスの細胞間感染の新たなメカニズムを解明
-異なる作用メカニズムによる新規エイズ治療薬開発の可能性-
論文
Hashimoto M, Bhuyan F, Hiyoshi M, Noyori O, Nasser H, Miyazaki M, Saito T, Kondoh Y, Osada H, Kimura S, Hase K, Ohno H, Suzu S.: Potential Role of the Formation of Tunneling Nanotubes in HIV-1 Spread in Macrophages.
J Immunol, [Epub ahead of print] (2016) PMID: 26773158 [ doi: 10.4049/jimmunol.1500845 ]

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